私はそれまで授業を組むのがあまり得意でなかった。授業って人によって同じ単元をやっていても全然違う内容に感じるくらいその人の「色」が出る。
その「色」によって生徒はやる気が出たり、やる気をなくしたりするわけだ。
同じ教員から見ていて良い授業(わかりやすい・生徒が興味津々)に共通点がある。それは工夫だった。工夫とは最後のスパイスのようなものでそのスパイスで魔法がかかったように授業が楽しくなったり、つまらなくなったりする。
そして良い授業をする人は何の授業を担当しても興味深い授業を展開する。
私はずっと逃げてきた。「授業よりも生徒指導の方が大切や」と・・・
しかしある先生に言われた。
「教師の給料は授業でもらってるんやで。良い授業ができる先生はよく生徒の事を見れてる。良い授業ができひん人は生徒のことが見れてない」
痛すぎるくらい的を得た言葉にぐうの音も出なかった。
そこから必死に授業の展開や教材などいろんな事を考えた。
・紙飛行機大会で単位の勉強を教えたり
・みんなで自作ブーメランを作って空気圧の勉強を教えたり
・iPadを使って動画を撮ったり編集したりしてニュース番組を作って仲間との協調性を高めたり
それから自分の授業のある日は楽しみで楽しみで仕方なくなった。
もちろん毎回成功するわけではない。
教材に凝り過ぎて内容が薄い時もあれば、紙飛行機でどっちが飛んだ飛ばないで喧嘩が始まったりしたが毎回反省点を修正して次の授業に行くと克服できる。そしてまた新たな課題が見える。これを繰り返して行くのが楽しかった。
PDCAサイクル。
P(PLAN計画)D(DOする)C(CHECK反省)A(ADJUST改良する)
私は恥ずかしながらこの時からやっとPDCAサイクルを意識して仕事をするようになった。教師は生徒指導だけで良いと思っていたがそれは授業作りから逃げるための言い訳に過ぎなかった。
でも始めは何を工夫していいかわからない。自分の中の創造力の扉をいくら叩いてもアイデアが出てこない。
なぜなら基盤がないからだ。
まずは誰かの模倣をすることからその道のプロフェッショナルは始まると教えられた。
模倣を繰り返し引き出しを広げると、ふとした時に全然関係のないと思ったことと融合すると意外と面白いアイデアになったりする。それをオリジナルと呼ぶのだとわかった。
そうして私はまずは色んな先生の良いと思うことを模倣しまくった。
年下の先生からも色々教えてもらって必死に学んだ。
そうすると私が担当していた「木工」の授業でいつも道具や手順の説明を目の前でやるのだが色んな角度や色んな机を使って見たが、ふとひらめいた。
作業手順の説明をYouTubeっぽくしよう!
とりあえず成功するかわからないが長期休み中に動画を撮影して編集する。そこには生徒が興味を引きそうな「倍速」や「効果音」などを駆使して映像を作った。
もちろんそれまで映像など作ったことのない私なので1から調べて「iMovie」の使い方をマスターした。
何事も1を「2」や「3」や「10」や「100」にするのは難しくないが
初めの0を「1」にするのがとても大変。
私にとって動画編集をやったことのない人が編集をやってみようと思う気持ちそれこそが0を「1」にすることだった。
それから数ヶ月ご・・・
気づけばそれが私自身の強みになり、気がつけば今は本当にYouTubeに動画を投稿している。
好きこそ物の上手なれと言う言葉がある通り色んなトライしたら色んな自分の特徴がわかって来た。
そして今のうつの私に授業を考えて実行するPDCAサイクルが出来ない。だから迷う事なく教員という職を辞める決断が出来た。
それもこれもあの時の「授業」の大事さを教えて頂いたからである。